物語

#0　物語は始まらない

それは少年と言うには幼すぎる、幼児と呼んだほうが正確な男の子。かつての私や貴方の姿でもある。
鉄道のシステムなど何も知らないし、知ろうとも思っていない。
彼の手には一片の積木が握られている。そしてそれは彼の手によって畳の縁を「走行」している。
その積木はあるときはバスにもなるだろう。建物にもなるだろう。けれどもその時それは「電車」だった。
幼児は幼児なりの想像力を駆使して、畳の縁に鉄道を「設定」したのである。
電車の「音」を自分の口で再現しながら、彼は電車を走らせる。彼に見えているのは走行風景なのか、それとも車窓を流れる景色なのか。
一片の積木を手に握ることで、彼は壮大な「自分の鉄道」を手に入れることができたのだ。
彼は「駅」に名前を付けるかもしれないし、自分の路線に名前を付けるかもしれない。彼の鉄道にとって必要なら名付けるだろう。
彼の鉄道は自由である。積木の電車に規格はないし、競合路線も歴史もないのである。
彼が欲しいのは自分の鉄道だ。積木の周囲に現れる風景だ。彼が見ているのは運転席に座る自分かもしれないし、踏切で電車を見送る自分かもしれない。
それはただの幻かもしれないが、大切な宝物のような時間でもある。

ひとつの「想定」でしかない彼が「空想」している鉄道を、さらに外部から「想像」することで、積木鉄道の「物語」が動き出すのである。

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●FAQ
Q1:で、物語とやらはいつ動き出すんですか？
A1:申し訳ありませんが未定です。ふと思い出したときに来ていただければ何かできているかも。