物語

#1-2　物語は始まろうとしているか？(2)

並んで走っている道路の幅が広くなり、車の数が増えてきた。
民家と畑だけが続いていた風景が変わり始めていた。
車掌のアナウンスは終着駅に近づいていることを告げている。
特急列車はまもなく終点に着く。
もっと乗っていたいけれど、早く着くのが特急なのだ。

僕の鉄道だったら、と少年は考える。
僕の鉄道だったら、特急は普通より時間がかかってもいいと思う。
たくさん乗っていられるから。
僕の鉄道なら、乗客の気が済むまで、特急列車は止まらない。
たくさんの駅を通過して、小さな列車を追い越して、
いろいろな風景の中をとばしていく。

---

●FAQ
Q1:普通より時間がかかる特急なんて無茶ではありませんか？
A1:時間がかかるのではなく「長く乗っていられる」と考えられませんか？

Q2:特別に急ぐから特急なのでは？急ぐということは乗っている時間を短縮するということでしょう？
A2:それは現実の世界の話であってね。
Q2:いくらなんでもそれは。
A2:子供たちにとっての特急って、乗っている時間の長さではなくて、速いかどうかが問題なんですよ。たぶん。
Q2:たぶんって、無責任な。

A3:特急は料金が高いのに、乗って楽しむ時間が少ないなんておかしい！と思ったことありませんか？
Q3:また「A」のあなたが質問してるし。そう思ったことはあるかもしれませんよ確かに子供の頃はね。
A3:だったらそういう鉄道があってもいいでしょう。どうせ空想なんだから。
Q3:いくら空想でも、それでは運行ダイヤが滅茶苦茶だ。
A3:積木鉄道にダイヤは無いってことでひとつ。
Q3:ダイヤが無い？納得できないなぁ。